― AI・サイバーセキュリティ・防衛分野へ、女性が率いるスタートアップの挑戦が広がる ―カナダのスタートアップ・エコシステムにおいて、女性起業家を支援する取り組みはここ数年で大きく進展してきました。その中心的な存在の一つが、DMZが毎年開催するWomen Innovation Summitです。2026年3月20日、第4回となるこのSummitがトロントで開催されました。起業家、投資家、業界のトップリーダーが一堂に集まり、カナダの未来を切り拓く女性主導のスタートアップにスポットを当てたこのイベントの様子をお伝えします。今年のSummit:ピッチ、投資、そして新しい産業分野へ今年のSummitの中核となったのは、Elevateとの共同開催によるピッチ・コンペティションです。カナダ全土からの数多くの応募から選ばれた、女性が率いるスタートアップ企業10社が登壇し、自社のビジョンと事業を発表しました。ファイナリストの10社の事業領域は、AIから女性の生殖医療、気候テック、防衛向けAI支援まで多岐にわたり、カナダの女性起業家たちが挑む課題や分野の広がりを示していました。また今年から新たに、Summit本番前の数週間にわたる「ファンドレイジング・ブートキャンプ」が導入されました。資金調達に向けた準備として、投資家に伝えるための事業説明や財務モデルを磨き上げるためのプログラムで、この期間を経て、各ファウンダーは十分な準備を整えた状態でSummitのステージに臨みました。210,000CAD(約2,180万円)の投資:受賞3社の顔ぶれ今年の投資はDMZ Venturesが主導し、現在、各社との投資条件の最終調整が進んでいます。July Health(100,000CAD/約1,040万円) …早期診断と予防ケアを提供するバーチャル生殖医療クリニックです。創業者のJulie Mai氏は受賞後、「この2年間、外部資金なしで信じてやってきた。今回の投資は、より多くのカナダ人をより早く助けられることを意味する。ようやく認められた、という安堵もある」と述べています。Knead Technologies(50,000CAD/約520万円) …企業の食品廃棄物削減を支援するオールインワン・プラットフォームです。ClassClown(50,000CAD/約520万円) …個別最適化された学習体験を届ける、音声ベースのAI学習プラットフォームです。さらにサプライズとして、BDC(Business Development Bank of Canada)のIsabelle Hudon CEOから、糖尿病患者と医療チームを支援するデジタルヘルス企業・Haibu Healthに対して10,000CAD(約100万円)の助成金が贈られました。BDCのコアバリューである「勇気」を体現した企業として「最も勇敢な企業」に選ばれたものです。「All In」というテーマが示すもの今年のSummitのテーマは「All In」、“対話から行動へ”という宣言です。起業家、投資家、経営者、起業支援者の立場の人たちが、それぞれの役割でより包括的なイノベーション・エコシステムを作る責任を担っていく、というメッセージが込められています。イベントのハイライトの一つは、DMZの「2026年 Woman of the Year」に選ばれたBDC(Business Development Bank of Canada)のPresident and CEO Isabelle Hudon氏の対談セッションです。防衛・安全保障をはじめとする各国の注目分野が変化するなか、カナダのイノベーション経済が今どこに向かっているのかについて、資本の流れや、AI分野の台頭を含む最前線からの視点が共有されました。パネルディスカッションでは、サイバーセキュリティ、宇宙技術、デュアルユース技術(軍民両用技術)など、世界情勢の変化にともない急速に注目が高まる分野を取り上げ、スタートアップにとっての新たな参入機会として議論が行われました。AI・サイバーセキュリティ・防衛分野への女性起業家の参入が加速しているという潮流についての話題は、今年のSummit全体を通じて繰り返し語られました。4年間の実績が示す、Women Innovation Programsの広がり2023年のスタート以来、Women Innovation Summitはカナダを代表する女性イノベーター向けのイベントへと成長しました。累計来場者数は2,000人超、Summitのステージに立ったファウンダーは40社にのぼります。Summitの枠を超えたDMZのWomen Innovation Programs全体では、これまでに4,200人以上の女性起業家を支援し、参加企業の累計資金調達額は5億2,200万カナダドル(約543億円)を超えています。DMZエグゼクティブ・ディレクターのAbdullah Snobar氏は、今年のSummitについて、「AI、サイバーセキュリティ、防衛といった分野が急速に動く今、女性起業家の活躍の余地が大きく広がっている。今年の目標は、その機会を可視化し、各起業家が自分のいる場所と次の一手を把握できるようにすることだった。」と述べました。女性起業家が単に「含まれる」だけでなく、次の時代を形作る分野で「リーダー」として立てるよう、DMZはその環境や機会づくりをこれからも積極的に続けていきます。