― 大阪・関西万博での学びを世界へ。実践を通じて深まったエコシステム理解 ―前編(詳細はこちら»)では、日本で実施された「DMZ × 千葉大学 グローバル起業家育成プログラム」において、日加の学生が混合チームで伝統産業を題材に起業家視点の提案に挑んだ様子を紹介しました。その学びを一過性の体験で終わらせず、さらに深めるために実施されたのが、本記事で紹介するカナダ・トロントでのプログラムです。プログラム概要と参加者本プログラムは、2025年8月25日から29日までの5日間、カナダ・トロントで実施されました。参加したのは、千葉大学の学生8名に加え、大阪・関西万博でのワークショップを経て選抜された千葉大学や日本全国の大学職員7名です。学生と大学職員という異なる立場の参加者に対し、それぞれに最適化されたプログラムを用意することで、「起業家エコシステムをどう体験し、どう自組織に持ち帰るか」という二重の視点から学びを深める構成となりました。プログラム構成とスケジュール本プログラムは、限られた時間の中で最大限の学習効果を生むため、スピード感のある設計が特徴です。⚫︎8月25日(Day1): オリエンテーション、市場調査ワークショップ、フィールドワークの準備⚫︎8月26日(Day2): フィールドワークの準備、エコシステムツアー in 楽天Koboオフィス、DMZ Japan Night (ネットワーキングイベント)⚫︎8月27日(Day3): 市場調査フィールドワーク、ブリーフィングセッション⚫︎8月28日(Day4): プレゼンテーション準備、ベースキャンプデモデイ観覧 (ピッチコンペティション)⚫︎8月28日(Day5):最終プレゼンテーション、ラップアップ(学内セッションの様子)◆万博からトロントへ:アイデアを“育てる”プロセス本プログラムの特徴のひとつは、大阪・関西万博での最終プレゼンテーションで高く評価された2つのビジネスアイデア「Leescha(コンブチャ)」と「LeesUP Bars(プロテインバー)」を軸に、さらなる検証とブラッシュアップを行った点です。学生たちは、トロント市内や大学内外でインタビュー調査を実施し、異なる文化・価値観を持つ消費者の反応を直接収集しました。学内では協力的な回答が得られる一方、ショッピングモールなど学外の場では声をかけること自体が難しい場面も多くありました。指導にあたったTMUの教授は、「調査が思うように進まない経験こそがリアルなマーケティングであり、重要な学びのひとつ」と語ります。仮説通りに進まない現実と向き合いながら、学生たちは限られた時間の中でインプットとアウトプットを高速で繰り返し、アイデアの解像度を高めていきました。(TMUキャンパス内や街での現地調査インタビューの様子)◆育てる側と挑戦する側、双方に開かれたプログラム設計本プロジェクトのもう一つの特徴は、学生向けと大学職員向けに、それぞれ異なるプログラムを用意した点にあります。起業家精神を「学ぶ側」だけでなく、「育て、支える側」も同時に育成することで、大学という組織全体でエコシステムへの理解を深めることを目指しました。学生向けプログラムでは、「実践で磨く起業家スキル」を軸に、ピッチング、ビジネスモデリング、市場検証といったテーマを扱うワークショップとフィールドワークを実施しました。単に知識をインプットするのではなく、「今この場で何を検証し、次にどの一手を打つのか」を常に問われる構成となっており、短期間でも意思決定と行動のスピードが求められました。参加学生からは、「見知らぬ人から率直な意見を引き出すことの難しさと重要性を実感した」「限られた時間の中で、インプットとアウトプットを往復する意識が身についた」といった声が寄せられました。前編での日本での経験が、海外という異なる文脈で再び試され、学びがより立体的なものへと深化していった様子がうかがえます。(学生の最終プレゼンテーションの様子)一方、大学職員向けプログラムでは、「エコシステムを“つくる側”の視点」に焦点を当て、トロントメトロポリタン大学(TMU)の職員とのワークショップや、大学リーダー、DMZの専門家とのディスカッション、施設見学を実施しました。テーマは、起業家精神を大学のカリキュラムや組織運営にどのように組み込み、持続的にスケールさせていくかです。特に、「大学の研究成果をどのように社会的インパクトへと転換するのか」という問いを軸に、教育・研究・産業界を結びつけるスタートアップ・エコシステムのあり方について活発な意見交換が行われました。大学が単なる教育機関にとどまらず、イノベーションの中核として機能する意義を、改めて確認する機会となりました。(教職員向けのプログラムの様子)学生と大学職員、それぞれ異なる立場でありながらも、同じエコシステムを異なる角度から体験したことは、本プログラムならではの価値と言えるでしょう。おわりに:前編・後編を通して見えたもの日本での短期集中型プログラムから始まり、カナダ・トロントでの実践へとつながった本取り組みは、学びを一度きりで終わらせず、試し、振り返り、磨き続けるプロセスそのものを体験する機会となりました。前編では、異文化チームでの協働や市場と向き合う最初の一歩を。後編では、その学びを異なる文脈に持ち込み、再検証し、深化させる経験を。それぞれが連続したプログラムとして設計されたことで、参加者は起業家精神やエコシステム理解を、より現実的で自分ごとのものとして捉えることができたと言えるでしょう。DMZ Japanは今後も、実践を重視し、国境を越えて学びを循環させるプログラムを通じて、次世代の挑戦者と、それを支える人材の育成に取り組んでいきます。