― 日加の学生が挑んだ、伝統産業×グローバル市場への実践的アプローチ ―プログラム概要2025年5月〜6月、DMZ Japanは千葉大学と連携し、「DMZ × 千葉大学 グローバル起業家育成プログラム」を実施しました。本プログラムは、日本人学生10名とカナダ人学生10名が混合チームを組み、実際の社会・産業課題に対して起業家的視点から解決策を提案する、短期集中型の実践プログラムです。取り組んだテーマは、「日本の伝統産業である日本酒製造の過程で生じる副産物(酒粕、もろみ、米ぬか等)を、いかにして世界市場に通用する製品へと転換できるか」。文化・宗教・消費者意識が異なるグローバル市場を前提に、学生たちは仮説と実践を高速で往復しながら製品アイデアを磨き上げました。プログラム構成とスケジュール本プログラムは、限られた時間の中で最大限の学習効果を生むため、スピード感のある設計が特徴です。⚫︎5月8日、13日、20日: オンラインにて事前準備ワークショップ。異文化チームでの協働に向けた準備を行いました。⚫︎5月28日(Day0): 成田空港に到着。⚫︎5月29日(Day1): 飯沼本家の酒蔵と国立歴史民俗博物館を訪問し、日本酒文化の背景や製造プロセスを体感的に学びました。⚫︎5月30日(Day2): 千葉大学でグループディスカッションを重ね、アイデアの方向性を具現化していきました。その後、大阪へ移動。⚫︎5月31日(Day3): 大阪・関西万博でグループ活動と万博来場者へのインタビュー。インタビューを通じて、製品アイデアに対するリアルな反応を収集しました。⚫︎6月1日(Day4): 大阪・関西万博のカナダパビリオンにて最終プレゼンテーション発表会。⚫︎6月2日(Day5): 午前は自由時間。午後、新幹線で東京へ移動。⚫︎6月3日(Day6): 午前は自由時間。午後、成田空港へ移動し、トロントへ出発。(Day1で訪れた千葉県の飯沼本家にて)◆DMZらしいユニークなポイント本プログラムには、DMZが大切にしてきた教育思想とプログラム設計の特徴が色濃く反映されています。まず、日本人学生とカナダ人学生が混合チームを組み、最初から「異文化協働」が前提となっている点です。言語や価値観の違いがある中で、限られた時間内に合意形成し、アウトプットを出すことは決して簡単ではありません。加えて、オンラインの事前研修はわずか3日間、フィールドワークから最終プレゼンテーションまでは実質5日間という短期間。準備期間が短く、かつ異文化環境での密なコミュニケーションが求められる点で、従来の起業家育成プログラム以上にハードな設計でした。さらに、本プログラムは「理論から実践へ」という一般的な起業家教育アプローチとは真逆で、「学びは教室の外にある」「不完全でも市場に出し、失敗から学ぶ」といった、トロントメトロポリタン大学(TMU)が提唱する起業家教育の思想を重視しています。その象徴が、今回の大阪万博での来場者インタビューです。当初、多くの学生が見知らぬ来場者に声をかけることに抵抗や緊張を感じていました。しかし、実際にインタビューを行い、生の声を聞く中で、自分たちの仮説が覆されたり、新たな視点を得たりする経験を重ねていきます。このフィールドワークを通じて、学生たちは自らのコンフォートゾーンを抜け出し、「市場と直接向き合うこと」の重要性を体感的に学びました。◆最終プレゼンテーションと成果最終プレゼンテーションでは、各チームから多様で創造的な製品アイデアが提案されました。例えば、酒粕とコンブチャを組み合わせたプロバイオティクス飲料、酒粕の美白効果に着目したフェイスマスク、酒粕をフリーズドライ加工したプロテインバーなど、伝統素材を現代的な価値へと再解釈した提案が並びました。(最終プレゼンテーションの様子)(実際のプレゼンテーション資料)これらのアイデアは、事前に行った万博来場者への質的調査をもとにブラッシュアップされています。調査を通じて、酒粕に含まれるアルコール成分に対する宗教的配慮、使い捨て製品が環境に与える影響への懸念、「プロテイン」という言葉が日本と欧米で異なるイメージを持つことなど、文化や性別による認識の違いが明らかになりました。学生たちはこうした洞察をターゲット設定や製品メッセージに反映させ、より市場に即した提案へと昇華させていきました。イベントの最後には、最も洞察に富んだ気づきを示したチームに贈られる「Aha! Moment Award」が、酒粕フェイスマスクを提案したチームに授与されました。(受賞チームの表彰式の様子)◆参加学生の変化と学びプログラム前後に実施したアンケートからも、学生たちの意識の変化が明確に表れています。「伝統文化×ビジネスへの関心」は、事後アンケートで平均4.7(5段階評価)と最も高いスコアを記録しました。また、「アントレプレナーシップの意識」は、事前の平均3.8から事後には4.1へと上昇。起業を「特別な人だけの選択肢」ではなく、「自分にも可能なキャリアの一つ」と捉える学生が増えたことがうかがえます。特に満足度が高かった点として多く挙げられたのが、「異文化チームでの活動」でした。単なる国際交流にとどまらず、言語の壁や価値観の違いといった困難を乗り越えて成果を出した経験を通じて、「多様性こそが価値創出の源泉である」という本質的な学びを得たことが、多くの学生のコメントから読み取れました。おわりに本プログラム「DMZ×千葉大学 グローバル起業家育成プログラム」は、日加の学生が短期間かつ高密度な環境の中で、社会課題解決に向けた実践的なイノベーション創出に挑戦する貴重な機会となりました。次回の記事では、場所をカナダ・トロントに移し、千葉大学の学生および教職員が参加した現地プログラムの様子をレポートします。